寿司屋のメニューにとんかつを取り入れたこと

寿司屋のメニューにとんかつを取り入れたこと

お寿司屋さんでアルバイトをしていた頃、もうひとつ店舗を増やす話が出た。その商品は、お寿司ではなくとんかつだった。新しい店舗は、遠いところに出すのではなく、お寿司屋さんと同じ敷地内に作ると言うので、今働いているアルバイトや他のスタッフは、2つの店の混み具合によって、行ったり来たりしてもらうと、社長から話があった。新店舗を作っている間に、お客さんの受けを調査するため、とんかつのメニューを取り入れてみることになった。お客さんの受けは結構よく、注文は多かった。お寿司以外のメニューが増えて、最初はスタッフもアルバイトも、大変だったが少しづつ慣れてきた。これなら、新店舗が完成しても、慣れるのは早いだろうと、一安心していると、メニューをもっと増やすと聞き、顔が青ざめた。メニューが多いのは、本当に困る。名前を覚えるだけでなく、値段やセット内容、おぼんに乗せる配置など、思っている以上に覚えることがたくさんあるのだ。新店舗が出来ることで、大変なことは沢山あるが、私は密かに店に好きな人がいた。好きな人と言うより、憧れの存在と言うべきだろうか。付き合いたいとか、その人とこうなりたい、こうしたいと言った願望はなく、ただ、アルバイトに行ったときに話せるだけで幸せだった。その人が休みのときは、寂しくて元気がなくなってしまうくらい好きだった。しかし、新店舗の完成を間近に、彼は実家の飲食店を継ぐために、実家に帰ってしまうことを知った。今でもそのとんかつ屋を見ると、憧れのあの人を思い出すのだ。

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